コラム

顔認証システムとは?その仕組み、活用方法まで徹底解説

顔認証イメージ

ディープラーニングの急速な進歩によって、画像認識による人物特定の実用化が視野に入ってきました。すでに中国では公安当局が犯罪者の発見に利用しているといわれています。犯罪防止やテロ対策に使えるのはもちろんですが、一般のビジネスにおいても、例えばデパートや銀行で、顧客が入口から入ってきただけで、その顧客の営業担当者に連絡が入るようなシステムがあれば、顧客の満足度向上に大きく寄与することになります。また最近では、高いセキュリティが求められる企業や施設の出入り管理での利用も進んでいます。

注目を集めている「顔認証」という技術は、どのような仕組みになっているのでしょうか。今回の記事では、顔認証システムの概要、仕組み、特徴、注意すべき点、活用シーンを詳しく紹介いたします。

顔認証システムとは

顔認証システムとは、カメラが取得した画像や映像から顔を検出して、人の顔を認証して本人確認をする技術です。生体認証技術のひとつとして開発され、ディープラーニングされた人工知能(AI)が使われています。動画や画像から個人の顔を読み取り、目、鼻、口などの特徴的な位置や、顔領域の大きさ等をもとに、登録された情報と本人照合を行う仕組みになっています。また最新の顔認証エンジンにより、マスクを装着したままでも高精度な顔認証で本人確認が行えるシステムも登場しています。

なお顔認証技術には、SDKのライブラリを使用してエッジデバイス内にシステムを内蔵する「エッジ方式」と、マイクロソフトやamazonなどのクラウドベースの外部APIソリューションを使う「クラウド方式」があります。それぞれ以下のような特徴がありますが、エッジ型による顔認証が、処理速度、セキュリティ、運用コストなどの面において優れているといえます。

エッジ方式による顔認証

エッジデバイスに顔認証システムが搭載されている「エッジ型」では、クラウド処理やデータ送信による遅延がなく、リアルタイムに正確な顔認証を実行することができます。また外部のデータベースにアクセスする場合でも、エッジデバイスから暗号化された容量の少ない画像データを送信して、データベース上のテンプレートと照合するため、高速で顔認証処理を実施できます。必要な画像データのみをクラウドに上げるので、通信コストを抑えることもできます。

クラウド方式による顔認証

カメラの映像をクラウドに直接送り、顔認証を行うシステムです。大量のネットワーク帯域幅が必要なため、データ通信のコストが増大するのがデメリットです。加えて、インターネット経由で顔写真データが送信されるため、脆弱なネットワークシステムでは、情報漏洩やハッキングのセキュリティリスクもあります。ただエッジデバイスの大規模な導入を必要としないため、すでに完全オンラインのビジネスを展開している場合などは、クラウド型での顔認証システムが適しています。

“顔認証”と“顔認識”の違いとは

ちなみに混同しやすい「顔認識」とは、画像から人物の顔検出を行って、性別や年齢、表情などを識別する技術となります。顔認識は以下のようなシーンで主に使われています。

店頭マーケティングに活用

顔認識では、来店者の年代や性別の他、表情もわかるので、“どのような属性のお客様が来店しているか”、“商品を目にしたときにどのような表情をしているか”、“購買に至らなかった来店者の特徴”などのほか、来店者数、滞在時間といった店頭での購買行動もデータ化し、店舗のより効率的な運営に活用することができます。また人物特徴や行動履歴などの分析結果を基に、デジタルサイネージにお客様ごとに最適な広告コンテンツを配信することも可能となります。

イベントや施設での人員配備/導線計画に活用

人の流れや滞留箇所を検知し分析することで、イベントや施設での効率的な人員配備や導線計画を立てることができます。

顔認証システムのメリット

次に、顔認証システムを導入すると、どのようなメリットがあるのか、ポイントを5つに絞って解説いたします。

1、なりすましを防ぎ、高いセキュリティレベルで認証できる

顔認証システムは、ICカードなどと違って、“なりすまし”が困難であるため、高いセキュリティレベルを保つことができます。また生体判定技術※を使えば、他人の顔写真を使った、“なりすまし”を防止することもできます。

※カメラを使って人の、まばたき、視線、唇の動きを取得し、カメラに写っている人が「生体か否か」を判定する技術

2、非接触のため衛生的

指をかざす等の操作(指紋認証)が不要で、非接触/非対面で本人確認を行なうことができるので、新型コロナウィルスによる感染症対策も実現できる認証方法となっています。また両手がふさがっていても入退場に困らないという特徴もあります。

3、パスワード忘れや紛失の心配がない

顔認証では、自分の顔そのものが、パスワードになっているので、暗証番号や入館カードなどと違ってパスワードの記憶や保管が必要ありません。

4、利用者の心理的不安が少ない

顔での識別は、人間が相手を判断する方法として、最も多く利用されているので、利用者の心理的不安が少ないとされています。

5、不正抑制につなげられる

顔認証で、「だれが、いつ入退場したのか」というデータを残せるため、会社や施設内で事件や事故が起きた場合、不審者を検索し、原因を究明することが可能です。外部からの侵入だけでなく、社員による不正の抑制にもつなげることができます。

顔認証システムの課題・注意点

安全で便利な顔認証システムですが、導入にあたっての注意点がいくつかあります。

1、認証の精度に差がある

使用する顔認証システムによって、認証レベルに差が出ます。例えば、顔の経年変化や斜め顔を認識できなかったり、髪型の変化や、メガネやマスクを着用している場合には対応できなかったりすることもあります。また最大で何件まで登録可能なのかも、事前確認することが大切です。

2、利用環境によっては精度が落ちることもある

システムによっては、屋外での使用に適さないタイプがあります。また暗すぎる場所や明るすぎる場所で認証の精度が落ちる製品もあります。また汚れや水滴などに対し、どれほどの耐環境性能があるかを事前に確認することも必要です。

3、プライバシー(個人情報保護)に配慮する

顔のデータは、個人情報保護法において、「個人情報」に定義されています。そのため導入後のトラブルを防ぐためには、ガイドラインに沿って「利用目的を本人に通知、公表したうえで運用する」、「利用目的を超えたデータの乱用を行わない」などの規定を事前に設定し、周知を徹底するようにしましょう。

顔認証システムの導入事例

顔認証が導入されている事例を紹介いたします。導入を検討している方は是非参考にしてみてください。

空港での「顔パス」搭乗

2021年7月より成田空港では、空港の自動チェックイン機で顔写真を撮影すると、パスポート・搭乗券の情報が紐づけられ、カメラに顔を向けるだけで手荷物を預けたり、保安検査場の入り口を通過したりできるようになりました。パスポートの受け渡しの機会が減るため、新型コロナ対策としても期待されています。

オフィスなどの入退室管理

入室時にゲートやドアでカメラ撮影を行ない、顔認証サーバーと照合し、登録した顔画像と照合しゲートを開錠できます。管理者は入退管理ができるので、出退勤システムとしても利用できます。またコロナ禍において、入退室の際に体温測定が不可欠になっていますが、顔認証システムは“おでこ”の温度と相性が良いので、検温の機能を併用すれば、従業員の体調管理にも役立ちます。

テーマパークでのアトラクション乗車

2018年より富士急ハイランドでは、アトラクション乗車に顔認証システムが導入されました。来場者にとっては、各種アトラクションにスムーズに乗車できるというメリットがあります。施設管理者は、入り口での来場者の滞留を防ぐことができると同時に、滞在人数を短時間で把握できるので、“密”の回避を行うことができます。

工場でのウォークスルー認証

ドアの開閉時に、ICカードを取り出す必要がなくなり、ハンズフリーで安全・簡単な入退ができます。また勤怠管理システムと連携することで、管理部門の業務工数の削減にも貢献することができます。

店舗での万引き防止

2020年よりレジ袋の有料化が進み、マイバックを持つ買い物客が増えましたが、最近になって多いのがマイバックを利用した万引きです。万引きは、何度も繰り返す再犯率が高いと言われています。常習犯や疑いのある人物の顔画像を、事前にシステムに登録し、再度来店した際に、店舗スタッフや警備員らのスマートフォンに通知して警戒を呼び掛けることができます。

未来型AI無人ストア(スマートストア)

店内に設置されたカメラと高度な画像認識技術により、購入したい商品を手に取ったあと、レジを通さずに、そのまま退店するだけで代金が決済される“スマートストア”がオープンしています。

スマートフォンでのロック解除や決済

face IDが実装されたiPhoneなどのスマートフォンには、顔認証システムが搭載されているため、スマホの画面を見るだけでロックを解除できます。またパスコード入力が不要で、電子マネーによる支払いを行えるため、スマホの利用がより便利になります。

まとめ

本記事では、顔認証システムの概要、仕組み、特徴、注意すべき点、活用事例をご説明させていただきました。現在多くの企業が、新型コロナ感染の拡大に伴い、非接触の本人確認で、衛生的な入退場管理システムの導入を検討しています。顔認証技術を活用した製品・サービスは各社からさまざま提供されていますので、自社の利用条件に合わせて比較してみてください。ただし、顔認証によって取得した写真データは個人情報に該当するので、システムを導入する際は、規約などを見直して正しい運用を行うことが必要です。また近年、EUでは公共空間で顔認証を使う捜査が原則禁止というAI規制案が発表されました。日本国内においても、行き過ぎた“監視”への懸念する声もあがっているため、今後の方針を注視していく必要があります。