堅牢性に優れた
高機能な産業用LTEゲートウェイ
モノとインターネットをつなぐIoT(Internet of Things)は、個人が家庭などで使用する一般用途から、工場や施設で使用される産業用途など、幅広い分野で活用されています。IoTを構成する要素には幾つかあり、その1つがゲートウェイです。ゲートウェイは、モノから得られたデータをインターネット回線を経由してクラウドやサーバーに送る機器で、これによりモノの管理、制御をPCやスマートフォンなどの端末から遠隔で行うことが出来るようになります。
本記事では、ゲートウェイとはどのようなものなのか概要を説明するとともに、ルーターとの違いや使用例、接続方法などについて解説します。
IoTを構成する要素の代表的なものが3つあります。1つめが、データの収集、フィードバックの役割を担うデバイス。2つめが、データの蓄積や解析を担うクラウド環境。3つめが、データの送受信、デバイスの管理、制御を担うゲートウェイです。
デバイスは、工作機器や搬送装置、ロボットなどに搭載されるセンサーの他に、設備に取り付けられた監視カメラ、情報を入力する操作パネルなど各種あります。デバイスは、通常インターネットへの接続機能を持ちません。そのままでは収集したデータをクラウドへ送ることはできず、クラウドからのフィードバックを得ることもできません。また、デバイスは数が多いので、全てのデバイスがクラウドと直接やり取りを行うと、ネットワークやサーバーに大きな負荷がかかります。
ゲートウェイは、接続されているデバイスが取得したデータを収集し、送信先を振り分けてインターネットを介してクラウドへ送ります。逆に、クラウドから送られてきたデータや指令は、ゲートウェイを中継して各デバイスへ送られます。その際に、各デバイスやクラウドで異なる規格の通信プロトコルが使われていれば、それを変換して中継を行います。ゲートウェイで中継することで、接続機能を持たなくても、デバイスはクラウドとデータのやりとりができる仕組みです。全てのデバイスのデータが、そのままの形でクラウドに送られないので負荷も減らせます。
また、ゲートウェイは、デバイスとクラウド間のデータのやりとりだけでなく、デバイスの管理や制御もおこないます。これにより、データが正しく送られてきているか、デバイスの稼働状況を確認したり、デバイスに何らかの動作をさせたりすることができるようになります。さらに、電源をとることが難しい場所に設置された監視カメラのようなデバイスに対し、PoE(Power over Ethernet)により電力を供給することや、ゲートウェイ自体にデータを一時的に蓄積し、ある程度のデータ処理とデバイスへのフィードバックを行う場合もあります。
ゲートウェイと同じように、デバイスをインターネットへ接続するものにルーターがありますが、ルーターは、データの送信先、IPアドレスを決めて振り分ける機能を持った装置です。ゲートウェイにも同様の機能はありますが、他の機能もあり、より広い意味で、ネットワークを中継する機器をゲートウェイと呼んでいます。
ゲートウェイはIoTの普及とともに、様々な場所で利用されるようになりました。
近年、家庭内でのIoT活用も進んでいます。テレビやオーディオ機器だけでなく、エアコンや冷蔵庫といった家電、照明器具などの製品もインターネットに接続しスマートハウスを実現する一般家庭向けのIoTサービスも多くの企業から提供されています。これら家庭内にある各種デバイスをインターネットに接続する際、ゲートウェイが利用されています。こういったシーンでは一般家庭内で利用するということから、軽量小型で比較的低価格なタイプの利用が一般的です。
製造現場では、製造装置をインターネットに接続してデータ収集や遠隔管理などを行う、スマートファクトリー化が進んでいます。機械の稼働状況を見える化し、故障や異常を速やかに検知することで、生産性の向上が見込めます。スマートファクトリー化においては、インターネット接続に産業用のゲートウェイが用いられます。
産業用ゲートウェイは、稼働している装置の近くや制御盤内など、家庭で利用されるゲートウェイよりも過酷な環境に設置されることが多いです。そのため、耐熱性、耐衝撃性、耐電性に優れ、防水、防湿処理がされているなど、産業専用の高い堅牢性が求められます。
監視カメラを使った設備や施設の管理、監視では、監視カメラをインターネットに接続しているものが多くあります。これにより、遠隔地からでも画像を確認できるようになり、カメラを操作することも可能になります。監視カメラをインターネットに接続する際にも、ゲートウェイが用いられます。
監視カメラは、人の手の届かない場所に設置されていることが多く、頻繁に点検することが難しい場合があります。そのため、遠隔監視で利用されるゲートウェイは、画像データの収集だけでなく、監視カメラの稼働状況の確認、管理をおこなっています。これにより、監視カメラが何らかの影響で再起動が必要になった場合でも、遠隔でリブートしたり、ファームウエアやソフトウエアの更新や設定変更も遠隔で行うことが出来るようになります。こういった機能は特に保守運用やサポート対応を担う方々から必要とされています。
ゲートウェイの接続方法は二つに分けられます。有線によるものと、無線によるものです。
ゲートウェイとインターネット、またはデバイスを、ケーブルにより接続します。代表的なものが、LANやWANで主に使われているEthernetです。他にも、DIO、RS232C、USBなど各種あります。ケーブルを用いるので、ノイズなどの影響が少なく、確実に接続がおこなえる反面、ケーブルを取りまわす手間がかかります。比較的短い距離で、安定的な接続をおこないたい場合や、ゲートウェイからデバイスに電源も供給したいような場合に向いています。
無線によるデバイスとの接続では、ケーブルを用いず、無線通信によりゲートウェイとデバイスを接続します。10mから100m程度と比較的短い距離で通信を行うWi-Fi、Bluetooth、ZigBeeや、最大1km弱程度の長距離で相互通信を行うことが可能なWi-SUN (920MHz帯無線)などが使用されます。デバイスとゲートウェイをケーブルで接続する場合ケーブルの敷設のコストがかなり負担になることが多く、無線での接続はその点でメリットがありますが、障害物やノイズにより通信に影響を受ける場合があります。
ゲートウェイからクラウドへ接続するための通信にはLTEや5Gが使わることが多いです。また衛星通信はネット環境を用意できない遠隔地に設置されたゲートウェイの接続などに使われることがあります。
有線、無線のどちらで接続するかは、使用する環境や、求める接続安定性の程度などにより選択します。いずれの場合も、インターネットに接続されるインターフェースについては外部から侵入されないように、ゲートウェイ側にもしっかりとしたセキュリティ対策が必要になります。
ゲートウェイはスマートホーム、スマートファクトリーの構築のためには無くてはならない機器です。環境に合った物を選んで利用してください。特に、産業用に利用する場合には、工場全体の稼働や人命にかかわる事故の防止にもつながる物なので、必要な性能を十分に満たしたゲートウェイの使用が求められます。また、セキュリティの対策も忘れずに行うことが重要です。