EV充電スタンドの稼働監視課題に対するIoTルーターの活用方法とは
昨今、カーボンニュートラル実現のために電気自動車(EV)の普及が少しずつ進んでいますが、そこで重要になるのがEV充電スタンドやそこに設置されたEV充電器です。今後の社会において重要なインフラとなるこれらの設備を屋外に設置する際、EV充電器の稼働監視にはいくつかの課題が生じます。本記事では、EV充電器の稼働監視における課題と、それを解決するIoTルーターの活用方法について解説します。
EV充電スタンドの現状
現在(2022年3月)の公共用EV充電スタンドの整備状況は、全国で3万基弱とされており、うち急速充電器は8,300基弱となっています。急速充電は重要な社会インフラとして位置付けられており、比較的設置が容易な自動車ディーラーやコンビニ、必要性の高い道の駅、高速道路のサービスエリアなどを中心に整備されています。
政府は、2030年までに公共用の急速充電器3万基、普通充電器12万基の設置を掲げています。その背景として令和2年12月に経済産業省によって策定された「2050 年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」では、自動車・蓄電池産業での電動化の推進や車の使い方の変革などの取組により、2050年までに自動車のライフサイクル全体のカーボンニュートラルを目指すとされています。また、2035年までに乗用車新車販売に占める電動車(EV)の割合を100%にすることが表明されています。
出典:経済産業省「充電インフラの普及に向けた取組について(2022年11月)」
出典:経済産業省「充電インフラの普及に向けた取組について(2022年11月)」
EVの普及のためにはEV充電スタンドの整備が不可欠ですが、単に整備すれば良いわけではなく、運用・管理のための設備監視を考慮する必要があります。以下では、EV充電器の稼働監視における課題をご紹介します。
EV充電器の稼働監視課題
EV充電器の稼働を監視するうえでの課題として以下の2つがあります。
人手による不具合発生時の対応が難しい
1つ目の課題は、EV充電器を複数の箇所に設置している場合、人手による不具合発生時の対応が難しいことが挙げられます。EV充電器に不具合が発生した場合、各設置場所に作業員を派遣し設備を1つずつ確認し普及作業にあたると、設置場所に向かうまでの時間や人件費が多くかかります。そのコストを考えると、遠隔で稼働の監視ができるシステムの構築が求められるケースもあります。
EV充電器は屋外で長期間稼働することが多い
2つ目の課題は、EV充電器は屋外で長期間稼働することが多いことです。ほとんどのEV充電スタンドは屋外にあるため、そこに遠隔監視用の機器を合わせて設置する場合、屋内に設置される機器と比べて直射日光による温度上昇や結露による水分の付着、誘導雷や瞬時停電による故障や不具合が発生するリスクが高くなります。
さらに僻地の場合、通信の状態が不安定な場所もあり、通信面での稼働の安定性が十分でないIoTゲートウェイやルーターを用いる場合にトラブルが発生する可能性もあります。
こうした課題に対応するためには、数多くの設備を遠隔で管理できる仕組みや、屋外の過酷な環境下でもトラブルなく安定稼働し、僻地でもインターネット通信が安定する堅牢性の高いシステムが求められます。
EV充電器の監視課題に対する解決策
前述の課題を解決するためには、産業用途で利用可能なIoTルーターやゲートウェイの活用が効果的です。中でも、耐環境性能や瞬停対策などの堅牢性に優れており、効率的な保守・運用が可能な遠隔監視機能も充実している製品が望ましいです。
さらに、ひとつの通信キャリアのネットワークが停止しても、別の通信キャリアに自動で切り替えて通信の復旧が可能であるなど、モバイル回線の冗長化を実現する複数SIMを搭載した自動切替が可能なものがおすすめです。また、IoTルーターよりも高スペックなIoTゲートウェイを使えば、カスタムアプリケーションを実装しエネルギーリソースの最適化など更に運用管理性を高めることも可能です。
IoTルーターの活用メリット
IoTルーターをEV充電器の稼働監視に活用することで得られるメリットを説明します。
複数デバイスの統一運用が可能:
クラウド上で動作するデバイス管理システムとの連携で、さまざまな運用の手間を削減できます。
例:デバイスの死活監視
IoTルーターの自動初期設定
故障交換時の設定内容引継ぎ
ファームウェアや設定内容の遠隔監視、一括更新 など
次章では、IoTルーター・IoTゲートウェイの活用事例を紹介します。
IoTルーター・IoTゲートウェイの活用事例
以下では、IoTルーター・IoTゲートウェイの活用事例として、株式会社アイ・グリッド・ソリューションズ様の事例を紹介します。
株式会社アイ・グリッド・ソリューションズでは、企業などが自社で利用するために太陽光パネルを設置した際に、予期せぬ余剰電力の発生や電力不足に対応するために電力の需給バランスをAIが予測し、最適な発電・放電の制御を行うエネルギーマネジメントプラットフォーム「R.E.A.L. New Energy Platform®」を提供しています。
R.E.A.L. New Energy Platform®では、事業所に設置した発電設備や蓄電池と系統電力、さらに事業所が使用するEV車両の充放電なども統合的に管理して、電力利用の最適化を実現。蓄電池やEV車両が蓄積している電力量を管理し、事業所が利用する電力需要のモニターを常時行っており、これらのデータをクラウド側に構築されたシステムに集積してAIが判断し、電源装置の充放電や事業所設備の電力使用量の調整などを制御しています。
そこにIoTゲートウェイを導入し、太陽光発電および蓄電池の制御装置、日射量計などのセンサーがインターフェース変換機を介してエッジゲートウェイに接続されるようにしました。また、現地の測定データのクラウドへの送信と、クラウドからの制御信号の現地装置への伝達をエッジゲートウェイ上で動作するアプリケーションが行われるようにもしました。これにより、LTEのルーター機能とサーバー機能を1台に集約するとともに低コスト・高品質なシステムを実現し、さらに幅広い動作温度に対応するため、屋外に設置が可能になりました。
EV充電スタンド機器の監視課題を解決するアムニモのIoTルーター
アムニモのコンパクトルーターシリーズは、屋内・屋外を問わず様々な用途に適したモデルをラインナップ。例えば、無線LAN搭載型コンパクトルーター(屋内版)AC15は、Cat.4のLTE通信モジュールを搭載に加え無線LAN 機能、LAN2ポート搭載、デュアルSIM対応、さらに瞬停対策機能を搭載し-20度~60度動作温度範囲に対応した高信頼性コンパクトルーターです。
また屋外対応製品AC25はAC15同様に無線LAN機能を搭載し、PoEを1ポート搭載、電源・LTEアンテナをひとつのボックスに収納し外部電源の瞬停時でも、瞬停対策機能によって10秒以上稼働を続けるなど、不安定な電源環境下でも利用可能です。防水・防塵に加え、動作温度範囲は直射日光も考慮して-20度~60度であり、誘導雷の対策としてSPD装置を実装しているなど過酷な屋外環境でも安定稼働できる堅牢性を持ちます。
以下資料では、ご紹介したEV充電スタンド機器の監視課題を解決する無線LAN搭載コンパクトルーターAC15、AC25について解説しております。
ご興味のある方は、ぜひご覧ください。
高い信頼性と運用性に優れた自社開発のIoTデバイスとクラウドサービスを組み合わせ、先進の映像・IoT・AIソリューションの提供を通じ、IoTとAIでつながる世界に貢献していきます。コラムにて定期的にお役立ち情報をお届けします。