防犯カメラにおけるPTZ機能の基礎と応用
2025/07/17

PTZ(パン・チルト・ズーム)機能を搭載した防犯カメラは、従来の固定カメラでは実現できなかった柔軟で広範囲な監視を可能にします。本記事では、PTZ機能の基礎から構造、主要な機能、さらにAIやクラウドとの連携による最新動向までを網羅的に解説。防犯システムにおいてPTZカメラがどのような役割を果たすのかを明らかにし、導入検討に役立つ情報を提供します。
目次
第1章. はじめに
現代社会において、防犯対策は個人・法人を問わずますます重要性を増しています。その中でも、防犯カメラは最も一般的かつ有効な手段の一つとして多くの場所で活用されています。近年では、従来の固定型カメラに加え、可動式で高性能な「PTZカメラ」が注目を集めています。本記事では、PTZカメラの基本的な機能や仕組みから、実際の運用例、導入時のポイント、さらには今後の展望に至るまでを詳しく解説します。
第2章 PTZとは何か?
PTZとは、Pan(パン)、Tilt(チルト)、Zoom(ズーム)の頭文字を取ったもので、それぞれ以下のような機能を意味します。
- Pan(パン):水平方向にカメラを旋回させる機能。広範囲のエリアをカバーできます。
- Tilt(チルト):垂直方向にカメラを上下に動かす機能。高低差のある監視に対応可能です。
- Zoom(ズーム):対象を拡大・縮小して映し出す機能。詳細な映像を取得できます。ズームの方式には光学ズームとデジタルズームの2種類があります。

これらの機能を組み合わせることで、PTZカメラは固定型カメラにはない柔軟な監視を可能にし、動きのある対象の追跡や、広範囲のエリア監視を一台でこなすことができるようになります。
第3章 PTZカメラの仕組みと構造
PTZカメラは、複雑な機械構造と高度なソフトウェアによって制御されます。以下に主な構成要素を紹介します。
- ハードウェア構造:パン・チルト用のモーター、ズームレンズ、回転軸、カメラ本体など。
- 制御方式:
- マニュアル操作:オペレーターが手動でカメラを操作。
- オートモード:設定されたパターンに従って自動的にカメラが動作。
- リモート制御:ネットワークを通じてPCやスマートフォンから操作可能。
- 通信方式:
- RS-485:アナログカメラ向けのシリアル通信方式。
- IP制御:デジタルカメラにおけるネットワーク制御方式。より高度な制御が可能。制御のためのプロトコルとしては一般的にはONVIFが使用されます。(ONVIFにおいてはProfile SにおいてPTZ制御方式が規定されています。)
※注)ONVIFについてはこちらのコラムを参照してください。https://amnimo.com/products/column/005/
第4章 PTZの主な機能と性能指標
PTZカメラには多彩な機能が備わっており、利用目的に応じた選択が求められます。
- プリセット機能:特定の視点を記憶させ、ワンクリックでその位置にカメラを移動。
- パトロール機能:複数のプリセットポイントを一定間隔で自動巡回。
- オートトラッキング:AIや画像解析により、動く人物や物体を自動追尾。
- ズームの種類:
- 光学ズーム:レンズによる物理的拡大。画質を保ったまま拡大可能。
- デジタルズーム:画像処理による拡大。画質は劣化する可能性あり。
- その他の指標:解像度(フルHD、4Kなど)、視野角、旋回速度、赤外線照明(夜間撮影)など。
第5章 実際の運用例と導入効果
PTZカメラはさまざまな現場で導入されており、用途に応じた運用が可能です。
- 商業施設:店内の不審者や万引きの監視。大型モールでは一台で広範囲をカバー可能。
- 工場・オフィス:出入り口の管理や作業エリアの監視。
- マンション・住宅:共用部の安全確保や敷地全体のモニタリング。
- 公共施設:駅や交差点での群衆・交通監視。緊急時の状況確認にも有効。
これらの場所では、PTZカメラの柔軟性と高精度な追跡機能が、犯罪抑止やトラブル対応に大きく貢献しています。
第6章 導入時のポイントと注意点
PTZカメラを導入する際には、以下のような点に注意が必要です。
- 設置場所の選定:死角を減らすための高所設置やカバー範囲の設計が重要。
- 操作性:ユーザーが簡単に操作できるインターフェースや、スマートフォン連携の有無。
- システム連携:録画装置(NVR)やセンサーなど、他の防犯システムとの連携性。
- 耐久性・メンテナンス:防塵・防水性能(IP66など)、温度耐性、清掃のしやすさ。
- プライバシーと法規制:撮影範囲が第三者のプライバシーを侵害しないよう注意し、個人情報保護法に基づいた運用が求められます。
これらの進化は、よりスマートで効率的な監視社会の実現に向けて大きな一歩となっています。
第7章 PTZカメラの最新動向と今後の展望
技術の進化に伴い、PTZカメラにも次のような革新が進んでいます。
- AI連携:顔認識や異常行動検出など、AI技術による自動判断と対応が可能に。
- クラウド対応:クラウド録画や遠隔監視によって、より柔軟な運用が実現。
- エッジ処理:カメラ内でリアルタイム処理を行うことで、通信負荷を軽減し、即時対応が可能に。
- 360度カメラとの統合:PTZカメラと魚眼レンズを組み合わせたハイブリッドモデルも登場。
これらの進化は、よりスマートで効率的な監視社会の実現に向けて大きな一歩となっています。
第8章 アムニモが提供するクラウド映像サービスにおけるPTZ遠隔制御機能について
アムニモは、広域に展開された防犯カメラの映像をクラウドにて集約し遠隔から映像の取得やカメラの制御を可能とする、クラウド映像サービスを提供しています。アムニモが提供するクラウド映像サービスにおいて、PTZの遠隔制御機能がどのように実装されているか、説明いたします。
- 統合ビデオ管理システム:統合ビデオ管理システムは、現地に設置されたアムニモのゲートウェイ装置で動作しているVMSと、クラウドのアプリケーションが連携することにより、少ないデータ通信量で遠隔からの防犯カメラの運用を実現するサービスです。PTZの遠隔制御機能は、現地ゲートウェイと利用者の制御PCとの間にP2Pの制御パスを貼る「Direct Mode」というモードにおいて、VMSが実装しているPTZ制御機能を遠隔のPCから制御することにより実現されています。
統合ビデオ管理システムについてはこちらをご参照ください
- クラウドビデオレコーダー:クラウドビデオレコーダーは、現地側に設置されたブリッジ装置がカメラから映像を取得し、それをクラウドに送信することにより、全時間帯での録画をクラウド側のストレージに保存するサービスです。クラウドビデオレコーダーでは、利用者がPCのブラウザにて操作を行なうと、クラウドからブリッジ装置に制御信号が送られて、PTZの制御が行なわれます。
クラウドビデオレコーダーについてはこちらをご参照ください。
第9章 まとめ
PTZカメラは、従来の固定カメラでは対応しきれない広範囲での監視や、動体の追跡に優れた機能を発揮します。導入にはコストや運用面での検討が必要ですが、その柔軟性と高性能は、防犯・監視体制の質を大きく向上させます。今後はAIやクラウドとの連携によって、さらなる進化が期待されるPTZカメラ。防犯カメラの選択肢の一つとして、導入を検討する価値は十分にあるといえるでしょう。
