屋外の防犯カメラ・監視カメラの常時録画を実現するために 屋外設置のリスクやその対策、録画方法をご紹介

屋外での常時録画イメージ
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街中や駐車場、ご自宅の玄関など、防犯カメラ・監視カメラが屋外に設置されることは一般的です。そのため、屋外用のカメラや夜間の暗い場所で撮影できるような赤外線カメラなども人気となっています。またインターネットに接続できるネットワークカメラなども普及が進んでいます。しかし、屋外で常にカメラを作動させ録画しつづけるには、屋内や室内用のカメラとは異なった対策が求められます。屋外の防犯カメラ・ネットワークカメラにはどのようなリスクがあるのか、常時録画に必要な対策などについてご紹介します。

防犯カメラ・監視カメラの耐用年数

防犯カメラを運用するためには、カメラ本体、モニター、レコーダー、ケーブルといった備品が必要です。防犯設備としてこれらを導入した場合、「事務機器及び通信機器」に区分されます。税法上の法定耐用年数は6年間であり、導入から6年間は減価償却資産として経費計上可能です。結果、実際の寿命も5~6年となっている防犯カメラが多いです。

しかし、使い方や設置する環境によっては、6年を待たずして途中で故障し、録画が停止してしまうケースも少なくありません。こういった故障が、常時録画を妨げる原因となっています。しかし、防犯カメラは精密機械である以上、運用しているなかで少しずつ劣化していくことは避けられません。特に、屋外に設置する防犯カメラの場合、風雨や気温変化など厳しい環境下に設置されることでさらに劣化が進みます。

屋外の厳しい環境

私たちは普段、何気なく屋外に出ているためあまりピンとこない方も多いと思いますが、屋外というのは精密機器が常設されるうえで、非常に過酷な環境です。このような厳しい環境により、防犯カメラが頻繁に停止・故障してしまい、常時録画が難しくなるケースもあります。屋外に設置される防犯カメラには、具体的にどのような困難が待ち受けているのでしょうか?

①直射日光

同じ場所に長時間設置されていると、内部に直射日光の熱がこもることで、外気温以上に温度が上昇してしまうことがあります。また、内部の装置から発生される熱と合わさって、予想以上に機械内部の温度が上昇するリスクもあるため、注意が必要です。

②水分

屋外に設置された防犯カメラは軒下などに置かない限り、雨が降ると濡れてしまいます。また、雨が降っていない場合でも寒暖差によって生じる結露などの水分や、高い湿度は、精密機械であるカメラの故障原因にもなります。

③粉塵

強い風などによって舞う砂やほこりが機械内部に入ってしまうと内部の回路の動作を阻害し、機器やカメラの稼働停止や故障につながります。

④衝撃

屋外に設置された防犯カメラは、風で何かが飛んできてあたる、鳥などの生き物がぶつかるなどの衝撃を受ける可能性があります。このような衝撃によりカメラのレンズや外装部が割れる危険性や、内部の回路が破損してしまうリスクがあります。

⑤雷

落雷により雷サージが発生し一時的に大きな電圧・電流が機器に給電されると、機器内部の基盤やケーブルが焼損してしまうことがあります。また、雷が落ちると電源、電圧が不安定になり、逆に一時的に電圧が流れなくなる瞬停(瞬間停電)が発生することもあります。瞬停(瞬間停電)では、電源の供給が突如断たれるため、内部のメモリやプログラムなどが破損し、録画が停止してしまうことがあります。

厳しい環境下でも常時録画可能なカメラを選ぶには?

屋外という防犯カメラにとっては厳しい環境下でも常時録画を実現するには、耐久性の高いカメラを選び、故障を防止することが必要です。しかし、耐久性が高いカメラは価格も高いケースが多いため、設置箇所や用途に合わせ、カメラを選ばなければなりません。耐久性の高さを示す指標や規格をご紹介するので、防犯カメラの関連商品を購入する際の参考にしてください。

①動作温度

防犯カメラには、カメラの機能が正常に動くことが保証された「動作温度範囲」が決まっています。-10度から50度までに設定されたカメラが多いですが、野外用の場合はもう少し幅が広い製品が多くなります。直射日光等の影響を考慮すると、できるだけ動作温度範囲が広い機器を選定するのが良いでしょう。なお、動作温度範囲と似ているもので「保存温度範囲」がありますが、これは電源が供給されていない状態でデバイスを安全に保存できる範囲のことであり、機器の動作を保証する温度範囲ではないことに注意が必要です。

②防水・防塵性

防犯カメラの仕様にはJIS(日本工業規格)で定められた防塵・防水の等級が記載されているため、確認してください。「IP〇●」のように「IP」から始まるコードが防塵・防水の等級を示しています。最初の数字が防塵性を示す「第一特性数字」であり、7段階に分けられています。次の数字は防水性を9段階で示す「第二特性数字」です。それぞれの等級で実現できることが決まっており、最も防水・防塵性が高い表示はIP68ですが、この場合「粉塵が内部に入らない」「水没に対する保護」の2つが実現されていることが分かります。詳しくは こちらのコラムからご覧ください。

③耐衝撃性

防水・防塵性と同様に、防犯カメラには耐衝撃性に関しても、IEC(国際電気標準会議)が定めた指標が表示されています。一般的に「IK〇〇」のように「IK」で始まるコードが耐衝撃性の等級を表しており、IK00(無保護)からIK10(40cmの高さから落ちる5kgの衝撃に耐える)まであります。屋外に設置する場合はIK8、もしくはIK9以上のカメラを設置するのが良いと言われています。

④雷対策

雷によるサージ対策としては、避雷器(SPD:Surge Protective Device)の活用が有効です。避雷器は落雷時に電源ケーブルや通信ケーブルを介してデバイスに流入する過電流をバイパスして地面に逃がす働きがあるため、カメラなどの機器の故障を防ぎます。避雷器が内蔵された、防犯カメラ用レコーダーやゲートウェイ端末を活用することで、最小限の装置で雷対策を実現できるケースもあります。また、瞬停(瞬間停電)には、キャパシタやコンデンサと呼ばれるバッテリー装置を活用し、電源の供給が一時的に断たれても情報を安全に保管するまで機器が動き続けることが大切です。停電対策専用の蓄電装置の導入や蓄電装置が搭載されたカメラや周辺機器を選択することで、停電による損害リスクを抑えることができます。

常時録画で気を付けたいデータ保存方法

常時録画を実現するには撮影されたデータの保存方法も重要になってきます。常時録画ではデータ量が多くなるため、確実にデータを保存できる場所を確保しておく必要があります。データの保存方法によっては、カメラの方が稼働し続けていたとしても、データの破損等で録画データが見られなくなり、必要なデータが見られないリスクがあります。必要なデータが見られなければ常時録画する意味がありません。データの保存方法にはいくつかタイプがあるので、用途や目的に合わせて適切な方法を選んで活用してください。

①HDD

HDDとはHard Disk Driveの略で、一般的にパソコンやサーバーのデータ保存やテレビの録画などにも使われる記録媒体です。最大容量が大きいため、防犯カメラの録画装置でも使えます。しかし、弱点としては振動に弱いという点があげられます。また、サイズが大きいためカメラに内蔵する形では使用できません。そのため、特に屋外の厳しい環境下へ防犯カメラを設置する場合、データ破損のリスクなどからHDDは避けた方が無難です。

②SDカード

SDカードはスマートフォンやデジタルカメラなどのデジタル機器で使われる記録媒体です。比較的安価で扱いやすく、多くの防犯カメラで使われています。また、小型であることから防犯カメラに差し込んで使用される場合もあります。しかし容量が少ないため定期的な交換が必要で、特に屋外だとメンテナンスがしにくい箇所に設置されているケースも多く、運用のためのランニングコストがかさむ傾向にあります。また、データの書き込み回数にも上限があるため、データが破損してしまうリスクも高いです。

③SSD

SSDはSolid State Driveの略で半導体素子メモリを使った記録媒体のことを指します。大容量のデータを保存しておく媒体としては長年HDDが使われてきましたが、近年SSDの容量が大きくなってきたこともあり、ノートパソコンなどにも搭載され、注目を集めています。衝撃による故障リスクが低く、サイズも小さいため防犯カメラの分野でもSSDが広がりつつあります。特に、データの読み書きの速度が非常に早いため、映像という大容量のデータを扱う防犯カメラシステムにおいて大いに役立ちます。屋外に設置するという観点では、発熱が少ないことから直射日光とあわせても、機械内部の温度上昇を最小限に抑えることができます。また、消費電力が少ないことから電源が不安定な屋外でも使いやすいです。デメリットとしては、HDDに比べ、容量単価としての価格が高くなってしまう点が挙げられます。

④クラウド

上記3つは記憶媒体にデータを保存する手法でしたが、このようなハードウエアにデータを保存するのではなく、インターネット上の保存領域(クラウド)でデータを管理する動きが、防犯カメラの分野でも広がっています。容量に制限がないクラウドサービスもあるため、記録媒体よりもずっと多くのデータを貯めることが可能です。クラウドを利用する最大のメリットは、遠隔地からでもデータ再生やパンチルト・ズームなどの操作が可能な点で、スマホやタブレットなどの端末から同時に複数台のカメラデータを閲覧できるなど、便利に使うことができます。そのため、ネットワークカメラやIPカメラと呼ばれるインターネットに接続可能なカメラも様々な種類が販売されています。しかし、クラウドを利用するにはネットワーク環境も必要です。屋外の場合、Wi-Fiが設置されておらずインターネットの敷設工事に、費用も時間もかかってしまうケースが多くあります。その場合にはLTE回線などのキャリア回線を活用したワイヤレスのシステムもおすすめです。ただし、LTE回線を使ってデータ量の大きいカメラ映像をアップロードすると、高額な通信費が発生してしまうことがあります。また、通信が不安定になると録画データを得ることができないといったリスクもあります。

⑤クラウドとSSDの組み合わせ

クラウド利用のデメリットを解決するため、クラウドとSSDを組み合わせた、いわゆる「エッジコンピューティング」の考え方を取り入れた仕組みも存在します。この仕組みでは基本的にデータはSSDなどの記録媒体に貯めていきますが、SSDに溜まったデータのうち必要なデータのみを無線でクラウド上にアップロードし、遠隔地からPCの画面等から閲覧できます。不要なデータはLTE回線を使わずSSDに蓄積するため、通信費を抑えながら運用可能です。また、通信が不安定でもデータはSSDに記録されているため、データ欠損のリスクを最小化できます。

常時録画時には気を付けたい「録画設定とデータ量」

データ保存方法を紹介しましたが、特にSDカードやSSDなどの記録媒体を活用する場合、データ容量には限りがあります。このデータ容量の大きさでどれくらいの期間、常時録画された映像を保存できるのか決まってきます。より長期間の録画データを貯めたい場合は、大きなデータ容量を持つ記憶媒体を活用することも重要ですが、録画の設定も重要になってきます。録画の設定を変更することで、映像データそのものの大きさを圧縮し、同じ保存容量でもより長期間の映像データを保存できるようになるためです。

また、データをクラウドに保存している場合でも映像のデータ量は重要です。特に常時録画したデータをクラウドに常にアップロードする場合、通信費が想定以上に高額になるケースがあります。そのため、録画設定を変更し、適切なデータ量になるよう調整することが必要です。このように保存方法とデータ量についてはセットで検討が必要となります。具体的にどのような設定でデータ量を調整できるのか見てみましょう。

①解像度

解像度とは画像の密度のことで「画素」とも言います。画像は小さな点の集まりで表現されており、解像度はその点がどれくらい密集しているのかを表しています。そのため解像度が高いほど高画質になる一方、データ容量も大きくなります。解像度を下げるとデータの保管可能な期間は長くなりますが、解像度を下げすぎると画質が粗く何が映っているのか分からなくなってしまうこともあるので、バランスを見ながら調整する必要があります。

②フレームレート

フレームレートとは1秒間当たりの静止画の枚数のことで、単位は「FPS」になります。映像データは静止画を順番に見せていくことで、人間の目には実際にモノが動いているように見えます。フレームレートが大きいほど、動きがなめらかな動画になりますが、その分データ量が多くなるので、常時録画を行う際には注意が必要です。

③圧縮方式

H.264と呼ばれる圧縮方式が現在主流となっていますが、この方式では従来方式のMPEG-2に比べ、2倍以上の圧縮効率があります。さらに近年ではこのH.264を上回る圧縮効率を持つH.264+やH.265+などが発表されており、技術の進歩が著しい分野です。このような新しい技術を活用することで、常時録画された大きな映像データを効率的に運用しましょう。

※常時録画は本当に必要?:動体検知機能

動作検知とは、映像内で捉えている物体や人が動作したことを検知する機能です。防犯カメラにおいては、例えば、ビデオレコーダーと連動し不審者の移動を感知した時間だけを検索し、自動で映像として記録するなどの使い方ができます。常時録画ではなくなってしまいますが、そもそも常時録画が本当に必要なのかを検討することでより効率的に防犯カメラを運用できるかもしれません。

防犯カメラ・監視カメラのメンテナンス方法

防犯カメラを長く、継続的に利用し、常時録画を実現するにはメンテナンスも欠かせません。定期的にカメラを清掃すると寿命を延ばすことが可能で、常時録画を阻害する故障や停止のリスクも抑えられます。また、顕在化していない問題に気づくためにもメンテナンスは重要です。適切に運用するためには、1~2年に一回のメンテナンスが求められます。

防犯カメラのメンテナンスは、一般的に以下のような内容で構成されています。

  • 動作確認
  • レンズ、ハウジング・取付部の掃除
  • カメラ、ゲートウェイとの配線チェック

これらの作業を行い、防犯カメラに問題や不具合が起きていないかチェックします。また、ハードディスクやケーブルなどは消耗品のため、これらの状態を確認し、必要に応じて交換を行うことになります。防犯カメラを屋外に設置している場合は、特に念入りなメンテナンスが必要です。

適切なメンテナンスをユーザー側で行おうとすると、手間に感じるかもしれません。メンテナンスは業者に依頼することもできますので、検討してみましょう。特に産業用に導入している防犯カメラの場合、業者に依頼した丁寧なメンテナンスを実施したほうが安心といえます。防犯カメラ業者によって、保守メンテナンスのサービス内容は異なります。また、メンテナンス依頼から対応までのスピードも重要です。

まとめ

屋外に設置される防犯カメラは厳しい環境下で動作し続ける必要があり、常時録画の実現には困難が伴います。しかし、今回ご紹介した観点に気を付けていただければ、「気づいたら録画されていなかった」といったリスクを低減し、屋外でも常時録画・常時監視を簡単に行えるはずです。もしお困りのことがございましたら、弊社アムニモまでお気軽にお問い合わせください。

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