産業用ゲートウェイとは?概要とセキュリティ対策などの注意点
IoT(Internet of Things)は、家庭用から産業用まで、様々な用途、業種で活用が進んでいます。特に産業用においては、スマートファクトリーをはじめ、大規模施設での設備管理や、危険地域での遠隔監視など、人では対応の難しい作業を効率よくおこなうため、導入を進める動きが加速しています。
IoTを導入するためには、幾つか必要とする要素があります。その1つがゲートウェイです。産業用としてIoTを活用し運用する場合は、産業用として耐えうる性能を持ったゲートウェイを使用しなければなりません。本記事では、産業ゲートウェイの概要を説明するとともに、セキュリティ対策などの注意点について解説します。
産業用ゲートウェイとは
企業がIoTシステムを構築するためには、必要な要素が幾つかあります。1つめが、データの収集、フィードバックをおこなうデバイスです。工作機器や搬送装置、ロボットなどに搭載されるセンサーや設備に取り付けられた監視カメラ、情報を入力する操作パネルなどがこれにあたります。
2つめが、データの蓄積や解析をおこなうクラウド環境です。IoTでは、デバイスからネットワークを介して大量のデータが送られてきます。データは、そのままでも利用は出来ますが、蓄積、解析することでより有効に利用できます。また、24時間、365日送られてくる膨大なデータを、人だけで処理、判断することは困難です。データを蓄え、自動的に処理や解析、操作をおこなうクラウド環境が必要になります。
もう一つ必要な要素がゲートウェイ(ルーター)です。ゲートウェイは、デバイスの取得したデータを、クラウドへ中継するとともに、デバイスの管理、制御などもおこなっています。デバイスは、通常インターネットへの接続機能は持たず、そのままではデータをクラウドへ送ることができません。また、デバイスが複数の拠点に設置されている場合などは数が多くなるので、データを個別にクラウドへ送ると大きな負荷がかかります。
ゲートウェイは、デバイスが取得したデータを収集し、送信先を振り分けてクラウドへ送ります。逆に、クラウドから送られてきたデータや指令は、IoTゲートウェイを経由してデバイスへ送られます。ゲートウェイでデータを中継することで、デバイスはクラウドとデータをやりとりすることが可能になるのです。
産業用ゲートウェイは、工場のIoT化や、大規模施設での設備管理や、危険地域での遠隔監視などの場面で活用されています。工作機器や搬送装置、ロボットなどに搭載されるセンサーやカメラをインターネットに接続するには、産業用ゲートウェイが必要です。監視カメラを遠隔地から確認、管理するためには、カメラをネットワークに接続する必要があり、その際にも産業用ゲートウェイが用いられます。過酷な環境でのデータ活用を実現するのに欠かせない存在なのです。
産業用ゲートウェイに必要な条件
産業用ゲートウェイは、工作機器につけられたセンサーや、施設の監視カメラなどのデバイスからデータを収集し、クラウドへ中継する役割を持っています。また、デバイスを管理、制御する役割もあります。産業用なので、データの処理速度が速いことや、対応している通信規格の多さ、デバイスを接続できるポート数、接続インターフェースの種類が多いことなど、基本性能が高い製品が求められます。
過酷な環境で使われる産業用ゲートウェイは、堅牢性も必要です。例えば、稼働している装置内、近傍に設置される際には、高温、高湿な環境に長時間おかれることになる場合があり、振動や衝撃を受ける可能性もあります。電源やモーター、通信機器の近くであれば、強い電磁波の影響を受けることが考えられます。屋外の監視カメラに接続されている場合は、雷によるサージを受けるかもしれません。耐熱性、耐衝撃性、耐電性に優れ、防水、防湿処理がされているなど、高い堅牢性が求められます。
また、生産現場では、他の装置の起動時や、電源装置の不具合により、瞬間的に停電がおこる場合もあります。安定的にデータを収集し、デバイスを管理、制御するためには、電源バックアップ機構を備えていることも産業用ゲートウェイには求められます。さらに、通信機能についても、データを途切れることなく送れるように、複数の通信手段を持ち、不具合時には素早く切り替えられる、通信のバックアップ機能を備えていることも重要です。
他にも、電源をとることが難しい場所に設置されたデバイスなどに対して電源を供給できるように、PoE(Power over Ethernet)のポートを備えていることなども、産業用ゲートウェイでは重要なポイントとなります。これらの課題に対処するため、一般家庭向けのIoTとは異なる高い性能が、産業用ゲートウェイには必要なのです。
セキュリティに注意
産業用ゲートウェイを導入する際に、もう一つ注意しておくべき点があります。それはさまざまな不正アクセスや脆弱性を狙うサイバー攻撃から、システムを防御するセキュリティです。IoTではデバイスがネットワークを介して外部と接続されているので、外部から侵入される脅威にさらされています。産業用のIoTでは、製造や会社の業務に関わる重要な情報、防犯情報などといった秘匿性の高いデータがデバイス内やデバイスに対してアクセスを許容しているクラウド内に保存されているので、デバイスやネットワークのセキュリティ対策を強化しなければなりません。
さらに、IoTのデバイスは、モノに取り付けられるので、なるべく小さく目立たないように作られているものが多いです。そのため、デバイスそのものが盗難にあうことも考えられます。デバイスの数も多いので、盗難にすぐに気付かないかもしれません。産業用ゲートウェイ側から、デバイスが正しく動作しているかを定期的にチェックし、異常を検知した際には自動的に知らせる管理システムも、セキュリティ対策の1つの方法として備えていることが望まれます。
また、盗難された後に内部を解析され、システムに侵入する経路を作られたり、悪意あるプログラムで攻撃されたりするリスクも出てきます。セキュリティを高めたプロセッサを使用することも、産業用ゲートウェイには求められます。例えばARM社の提供するCortex-Aシリーズのプロセッサでは、通常の環境とセキュリティ用の環境を分離する、「TrustZone」と呼ばれる技術が使われています。セキュリティ用の環境からは通常の環境にある全てのデータにアクセスできますが、逆のアクセスには制限がかけられていて簡単にアクセスすることはできません。これにより、通常の環境に侵入した不正なプログラムは、セキュリティ用の環境に格納したデータを見ることができず、安全性を向上させることができます。
まとめ
産業用ゲートウェイは、基本的な性能が高いことはもちろん、様々な外部からの不正アクセスに対して強いことが欠かせません。IoTにより機能的になった工場を安心・安全に稼働させることや、障害により監視カメラが停止してしまわないようにするためには、十分な性能としっかりとセキュリティの対策が取られた産業用ゲートウェイを選択することが重要です。どのような目的や場所で使用するかを確認し、その環境や状況にあった装置を選んでください。
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