高岡市 アンダーパス冠水監視ソリューション
費用対効果の高い映像ソリューションで地域の安心安全を向上
— 高岡市都市創造部土木維持課 様・高岡ケーブルネットワーク株式会社 様・株式会社 三技協 様 —- 課題
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- アンダーパスの冠水は市民生活に深刻な影響を与えており、特に大雨時に車両が冠水箇所に突っ込む事故が発生していました。従来、職員が現場で目視確認を行うことが多く、迅速な対応が難しい状況でした。また、パトロール体制にも限界があり、ゲリラ豪雨や突然の気象変化に対応できないケースが頻発していました。
- 導入の効果
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- 職員目線、市民目線、システム効果の3つの視点
- 職員の負担軽減:アンダーパスの監視を遠隔で行えるため、現場に赴く必要が減り、他の緊急対応にも注力できるようになりました。
- 迅速な対応:リアルタイムでの映像確認が可能になり、車両が冠水箇所に突っ込むリスクを減らす対策が強化されました。
- 市民サービスの向上:市民からのクレーム対応がスムーズになり、主要な道路の冠水状況が可視化され、安心感が高まりました。
概要:
富山県高岡市は、四季折々の豊かな自然に囲まれた北陸地方の都市です。特に冬季には大量の降雪があり、春先の雪解けや梅雨の時期には河川の増水や冠水が頻発します。このような気候条件のもと、高岡市内にはアンダーパスが多く、雨水が溜まりやすい構造になっています。特にゲリラ豪雨や夜間の大雨時には、冠水によって自動車が浸水する事故や、交通の混乱が発生し、市職員が迅速に対応する必要がありました。
従来の対応方法では、市職員が現場に出向き、冠水状況を目視で確認して対応を取っていましたが、この方法では迅速な対応が難しく、職員の負担も増加していました。特に夜間や休日においては、職員が現場に到着するまでに時間がかかることが多く、その間に事故が発生するリスクもありました。また、すでに冠水している箇所に車両が進入してしまうことも頻繁に起きていました。
このような背景から、高岡市は最新技術を活用して課題解決を図るため、WiFi Halow(802.11ah)と監視カメラを導入しました。このシステムは、株式会社三技協様や高岡ケーブルネットワーク株式会社様との連携により実現され、複数のアンダーパスにカメラを設置することで、冠水状況をリアルタイムで監視できるようにしました。さらに、補助金を活用することで、導入コストを抑えることに成功し、予算の制約がある中でも効率的なシステムを構築することができました。
このソリューションにより、職員が現場に赴くことなく、遠隔から冠水状況を把握し、対応個所の優先順位を付けた上で早期に対応を取ることが可能となり、市民の安全性を高めるとともに、職員の業務効率化にも寄与しています。
遠近2台のIoTカメラを使った現在の監視体制
プロジェクト関係者
(左から株式会社三技協 シニアエンジニア 表野篤雄様、高岡市都市創造部土木維持課係長 清水重秀様、高岡ケーブルネットワーク株式会社取締役 事業統括本部長 深澤浩様、同技術部エンジニア 熊田貴一様)
システム構築と導入プロセス
今回導入されたソリューションには、以下の技術が活用されています。
1:カメラ監視システム:冠水箇所を遠隔で監視し、車両の突入を防ぐためのシステム
2:クラウド連携:データはクラウドに集約され、関係部署や市の職員が15分ごとのスナップショットやライブ映像を確認できる体制が整えられています。
3:データ利活用:冠水履歴画像が蓄積出来、気象データと組み合わせ、発生予測に繋げる。
4:ゲリラ豪雨などで急激に水位が上昇する際、アラートを発し、迅速な対応を促す追加システムを検討中
ソリューション構成
結論
今回の導入事例は、地域の実情に即した技術活用によって市民の安全と職員の負担軽減を両立した成功例です。クラウド型監視カメラでの防災対策の標準モデルとなる可能性を示しました。高岡市は、このシステムを全国に展開し、他の自治体にも積極的に導入を推進していきます。
今後の展望
高岡市では、今回導入したアンダーパス監視システムの成果を踏まえ、今後さらにセンサーを駆使したIoTソリューションの導入により、防災・減災対策を強化する計画を立てています。アンダーパスにおける冠水監視の成功をきっかけに、積雪による交通障害の監視や、道路の安全確保を目的としたリアルタイム監視システムの導入も視野に入れています。特に冬季は大量の積雪が市内全域で見られ、交通への影響が大きいため、降雪状況を監視するシステムの整備が重要です。今後はカメラを用いて、積雪量をリアルタイムで把握し、市内の道路状況を広く市民に提供することで、安全な通行を確保することが目標となっています。
さらに、監視カメラや水位センサーによるデータを蓄積し、災害対応の精度を高めることも期待されています。これにより、蓄積されたデータを基に、どの地域が特にリスクが高いかを分析し、効率的な対策を講じることが可能となります。また、これらのデータは、今後の都市計画やインフラ整備にも役立てられる見込みです。特に、気象データとの連携を進めることで、さらに精度の高い冠水予測や積雪対策ができるようになり、市全体の災害対応能力が向上することが期待されています。
気象データと連携(左下) 追加予定のIoTソリューション(右下)
一方で、市民への情報提供にも注力する予定です。現時点では、職員がリアルタイムで監視している冠水や積雪の状況を、コミュニティチャンネルや市の公式ウェブサイト、LINEなどを通じて市民に提供するシステムの構築が検討されています。これにより、特に高齢者や交通弱者が冠水箇所や積雪の深刻な場所を事前に知ることができ、より安全なルートを選択できるようになることが目指されています。リアルタイムでの情報提供によって、市民一人ひとりが適切な行動を取ることが可能となり、災害時の被害軽減につながると考えられます。
さらに、高岡市では、今回のアンダーパス監視システムの導入事例を他の自治体へ展開することも検討しています。近隣の射水市や砺波市などでも同様の課題を抱えており、すでに一部の地域で協力体制が構築されています。今後は、北陸地方を中心に、この技術を全国に展開するための実証実験を進め、都市部だけでなく、郊外や山間部の災害対策にも広く応用できるようにする計画です。また、他の自治体が補助金を活用して導入を進められるよう、成功事例として発信することも視野に入れています。
こうした取り組みを通じて、高岡市は「災害に強い都市」を目指し、技術の活用によって市民の安全を守り続ける計画です。これにより、都市全体の災害対応力を強化し、未来に向けた持続可能な都市づくりを進めていきます。