エッジコンピューティングとは?活用事例や課題、将来性を解説
IoT技術の発展、活用の促進が進むことにより、「エッジコンピューティング」が注目されてきました。エッジコンピューティングは、IoTの普及がさらに進む将来においては、必要不可欠な技術といえます。活用に向けたデバイスの開発や、技術研究も活発に進められ、今後その流れは加速していくことが予想されます。
本記事では、エッジコンピューティングとはどのような技術であるかを説明するとともに、活用事例や課題、将来性などについて解説します。
エッジコンピューティングとは
近年、遠隔地にあるサーバにデータを集約し、一括して処理を行うクラウドコンピューティングが普及しました。遠隔地にあるサーバを、空の上の雲(クラウド)に例え、そのように呼ばれます。クラウドコンピューティングにより、各所のデータを一括して管理できるだけでなく、処理能力の高いサーバでデータを処理することで、より高度な結果を出すこともできます。
エッジコンピューティングは、クラウドコンピューティングとは逆になります。デバイスの近くにデータを処理するサーバやゲートウェイデバイスを置く、またはデバイス自身がある程度のデータ処理能力を持ちます。ネットワークの端(エッジ)でデータを処理するので、このように呼ばれます。
エッジコンピューティングが注目されるようになった理由としては、スマートフォンやIoT端末の普及によるクラウドの処理能力の限界があります。既にインターネットに接続されているデバイスは、数百億とも言われ、その数は、指数関数的に今後も伸びていくことが予想されます。全てのデバイスから、あらゆるデータがクラウドに送られれば、いずれ処理できないほどの量になるかもしれません。エッジ側で処理できるデータはエッジのデバイスで処理し、サーバに送るデータも、エッジ側で選択することでサーバの負荷が軽減されます。
また、通信の速度はサーバとの距離に関係するので、トラブル検知後の機械の緊急停止や、監視カメラによる災害予兆判断といった、リアルタイム性が求められるような処理が遅れる可能性も出てきます。また、クラウドとの通信障害が発生した際、全てをクラウドで処理していた場合は、何も制御できなくなり、全てのものが停止してしまうリスクも考えられます。
エッジコンピューティングは、クラウドコンピューティングのデメリットを補います。モノとインターネットがつながるIoTの普及には、重要な要素となっています。
エッジコンピューティングの活用例
エッジコンピューティングは、工場、自動車、農業、小売り、医療など、既にさまざまな産業で活用が進んでいます。
工場でのエッジコンピューティング
工場内の製造機器から送られてくるデータの処理に、エッジコンピューティングが活用されています。製造機器には数多くのセンサーが備えられ、多くのデータを連続的に出力しています。これらすべてのデータをクラウドに送信してしまうと、サーバに負荷をかけるだけでなく、処理の不要なデータも送ることになり、通信コストを引き上げてしまいます。製造機器の近くに設置されたサーバやゲートウェイにより、データの処理をおこない、クラウドにあげるべきものはクラウドへ送り、緊急性の高いものなどはエッジ側で処理することで、リアルタイム性が保たれ、コストも削減できるようになります。
自動車
自動運転の研究が進む自動車ではエッジコンピューティングの技術が導入されています自動運転では、人の命にかかわる判断を瞬時におこない、操作までする必要があります。クラウドまでデータを上げて処理を行い、その結果を待って操作していては間に合いません。緊急性の高いものは、自動車に搭載されたコンピューターと、カメラやレーダーにより、データを処理して瞬時に判断をします。自動車の運行状況のチェックや、より快適な運転のためのデータ収集といった、多くの情報を分析して結果を出すものは、外部ネットワークと接続された自動車(コネクティッドカー)からデータをクラウドに蓄積して、処理が実行されています。
小売業
小売業では、来店客の行動分析にエッジコンピューティングが利用されています。店舗内に取り付けられた防犯カメラからは、店内を移動する来店客の映像が得られます。このままの映像をクラウドに送るのでは、データ量が膨大になり、通信コストが上がり、サーバにも負荷がかかります。
防犯カメラの画像を店舗内のコンピューターで処理することで、人の位置を座標として捉えて、位置情報だけをクラウドに送ります。サーバは、来店客の位置情報を分析することで、どの時間帯に、何人の人が、店内をどのように動いたかがわかります。多くの店舗を持つ店であれば、それぞれの店舗の立地による差なども分析することがきます。また、人の動作から次の行動を予測するアプリケーションサービスやAIモデルを店舗側のコンピューターで稼働させれば、サーバとの通信による遅延もなく、瞬時に犯罪行為などを予見し、適切な対応をとることも可能になります。
監視カメラを用いる各種業界
建物や大規模施設の安全管理や、災害危険エリアの監視などのために監視カメラを用いる業界でも、エッジコンピューティングが注目されています。安全管理や災害対策などでは、リアルタイム性を求められる処理も多く出てきます。ある程度の処理をエッジ側が行うことで、リアルタイム性が保たれます。また、監視カメラが故障や破損などにより停止しているかを、エッジ側で常に管理して、映像を途切れないようにすることなどもおこなわれています。
例えば、警備会社では、侵入検知センサーなどの警報装置による機械警備が現在の警備用センサーの主力ですが、これに加えて監視カメラの映像を遠隔で取得し映像を見た上で、現場に警備員を派遣する必要があるかを判断したいと考えるようになっています。また、通過した人数のカウントや自動車のナンバープレートの識別など、警備会社の業務全般に対して監視カメラで撮影した映像を活用する用途が増加しています。このような市場の要求を背景に、停止することが少ないシステムを構成することが期待されています。
エッジコンピューティングの課題
エッジコンピューティングのさらなる普及には課題もあります。デバイスがより高度になり数も増えれば、出力されるデータの量も増え、高速で大量のデータを処理しなければなりません。そのためには、従来以上に高い処理能力があり、小型で低消費電力なコンピューターが必要となります。また、工場内の機器の近くや、自動車内で使用されるコンピューターは、熱や振動、衝撃にも耐えることが必要となります。処理能力が上がれば、電力消費が多くなり、小型化も難しくなります。熱などに対する対策もしっかりとおこなわなければなりません。
また、セキュリティの強化も重要です。小型で機器の近くで運用されるコンピューターは、目立たなくなります。ネットワークを介した外部からの攻撃だけでなく、盗難されて解析されるなどの、内部的なセキュリティにも注意が必要です。セキュリティ用の環境が分離されているといった、セキュリティを高めたプロセッサを使用することでリスクを軽減することができます。
まとめ
ネットワークに接続されるデバイスは今後も増え続け、エッジコンピューティングが活用される分野はさらに広がります。活用していることに気づかないほどより身近なものとなっていくでしょう。コンピューターの機能向上や、小型化などと共に、5Gなどの通信技術の発達もあり、エッジコンピューティングの実現も容易になりました。クラウドコンピューティングとエッジコンピューティングは、状況に合わせて使い分けることが重要です。それにより、高度で安定性のある最適なシステムが構築できます。
以下の資料では、監視カメラの映像に活用に用いられる技術の変化について詳しく説明していますので、ぜひご覧ください。
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