わかりやすく解説!太陽光発電の仕組みとは?
2012年7月から開始された「FIT※1制度(固定価格買取制度)」により、再生可能エネルギーの発電設備が急激に増加しました。そして新たに2022年4月からは「FIP制度(※2)」が加わる方針となりました。再エネの中でも特に太陽光発電は、電気自動車(EV)の普及や蓄電池との組み合わせによる多彩なビジネスモデルの誕生により、自家(10kW未満)・産業用(10kW以上)ともに、加速度的に増えていくことが見込まれています。太陽光発電システムは、主にパネルとパワーコンディショナと架台の3つから成り立っています。今回の記事では、太陽光発電の概要、システムを構築する各装置(太陽光パネル・パワーコンディショナ、ブレーカー・積算電力計)、そして太陽光発電の課題とその対策までわかりやすく解説いたします。
※1Feed-in Tariffの略。再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が一定価格で一定期間買い取ることを国が約束する制度。
※2Field in Premiumの略。再生可能エネルギー発電事業者が発電した電気を卸電力取引市場や相対取引で売電した場合、基準価格(FIP価格)と市場価格の差額をプレミアム額として交付する制度
太陽光発電の仕組み
太陽光パネルが光(ソーラー)から変換した電気を利用しやすい形に変え、家庭で利用したり、事業として電力会社に売ったりすることを目的としたシステムは、以下の装置が必要となっています。
- 太陽光パネル
- 接続箱
- パワーコンディショナ
- ブレーカー(漏電遮断器)
これらを組み合わせてシステムが構成されています。
太陽光パネルで生じた電気は、接続箱でまとめられ、パワーコンディショナで一定電圧の交流となります。これを発電者が使用した後に、余った電力を電力会社が買い取る方法が「余剰電力買取制度」で、発電した電力をすべて買い取るのが「全量(総量)買取制度」となっています。注意が必要となってくるのが、2020年にFIT(固定価格買取制度)が変更された点です。従来の精度では10kW以上の規模の太陽光発電は「余剰買取制度」か「全量買取制度」を選択できましたが、2020年以降に認定を取得した10kW~50kW未満の太陽光発電設備は10kW未満の太陽光発電システムと同じく、「余剰買取(発電量の30%以上を自家消費に充当)」のみとなりました。
パワーコンディショナの出力は、単相100Vの場合、実際は107Vに設定されています。なぜなら、商用電源の規格は101±6V、つまり95~107Vになっているので、それ以上の電圧にすると、電気は電圧の高いほう方から低いほうへ流れるので、送電線へ電力を流すことができるようになります。これを「逆潮流」といいます。
問題となるのは、送電線の電圧が107Vより高くなった場合です。近隣に太陽光発電施設が多い条件で起こる現象で、各発電施設がフル稼働したとき、送電線に流れ込む電気の量が多くなりすぎると、電圧が107V以上になってしまいます。すると、パワーコンディショナの電圧制御機能が働き、出力を抑制します。
<発電から送電までの簡単な流れ>
太陽光パネルとは
太陽光パネル(ソーラーパネル)は、システムの核となる機器で、現在、住宅の屋根に設置しているケースも多く見かけるようになりました。太陽光パネルは、一つ一つの太陽電池(セル)の集合体(モジュール)で、モジュールがさらに集合したものを「アレイ」と呼んでいます。半導体であるシリコンに光(ソーラー)があたることによって、半導体内の電子が動き、電位差が生じることで電気が発生します。光のエネルギーに電力を変換しても、半導体自体に物理的な変化がないので、半永久的に発電を続けることができます。
太陽光パネルの種類
パネルの種類は大きく分けると、シリコン系(単結晶型、多結晶型、アモルフィス型、HITシリコン型)と、化合物系の2つのタイプに分類できます。それぞれのメリット、デメリットを一覧にまとめました。この中で、単結晶型と多結晶型がもっとも普及していますが、高価なので、シリコン系以外の素材の開発と低価格化への取り組みが推進されています。特にCIS/CIGSは、市場の拡大が最も期待されています。
<シリコン系>
単結晶シリコン
形状:1つのセルが1つの結晶から成る。
メリット:最初に開発され、長年使用されている。発電効率が高い。
デメリット:価格が高い。高温では変換効率が大きく低下する。
多結晶シリコン
形状:多くの結晶が集まった基盤を基にセルを形成。
メリット:発電効率が単結晶型に次いで高い。単結晶型より安価。
デメリット:単結晶タイプに次いで価格が高い。高温では変換効率が大きく低下する。
アモルフィス(非結晶)シリコン
形状:ガラスや金属の板の上でシリコンを極限まで薄い膜状にする。
メリット:高温時の出力低下が少ない。大面積の製造ができ、曲面に設置可能。
デメリット:変換効率が単結晶型・多結晶型より低い。
HITシリコン(ハイブリッド)型
形状:単結晶とアモルフィスを組み合わせたもの。
メリット:高温時の出力低下が少ない。
デメリット:価格が高い。
<化合物系>
CIS/CIGS
形状:CISは銅、インジウム、セレンを原料とした化合物半導体で作られたもの。CIGSは、これら3つの元素にガリウムを加えたもの。
メリット:暑さに強い。製造コストが安い。影になっても発電量が落ちにくい。今後さらに活用が進む見込み。
デメリット:変換効率が結晶系シリコンに比べて低い。
CdTe
形状:カドミウムとテルルを原料とした化合物半導体で作られたもの。
メリット:非常に優れたコストパフォーマンスと発電効率。
デメリット:有害物質であるカドミウムが含まれている。(日本で製造している企業は無い)
太陽光パネルの年間発電量
天候などの日照時間により地域で差はありますが、平均的には1kWhあたり年間で約1000kWhから1200kWhの発電量となります。
太陽光パネルの寿命
一般的には経年劣化は避けられないものの、長期にわたって(約30年間)使用できるといわれています。各メーカーの技術が大きく向上し、パネル自体の能力はほとんど遜色がなくなってきています。これからは、30年、50年という期間が経過した時に、どれだけ元の発電量を確保できるかどうかという性能が問題になってくると思われます。またパネル強度に関連する規格は、「JIS C 8990」で定められており、耐風圧荷重は2400Pa(風速に換算すると、毎秒62m)に耐えられる設計となっています。
ただし、「ホットスポット」と呼ばれる現象には注意が必要です。例えば、パネルの一部に落ち葉などが乗り、完全に発電が行われなくなった場合、その部分が抵抗体となってしまいます。この抵抗体になった部分に、ほかのセルが発電した電気が流れると、抵抗体は電熱器のニクロム線のように発熱します。この発熱面が「ホットスポット」で、パネル内の配線が切れることがあります。それを防ぐために入れているのがバイパスダイオードと呼ばれるもので、通常は、一枚のパネルあたり2~3個、ブロック単位で入っています。
パワーコンディショナとは
太陽光パネルで発電された電力は直流で、そのままでは売電できません。電力会社の電力と同じ交流に変換しなければなりません。この直流の電気を交流の電気に変える装置をパワーコンディショナ(パワコン)、またはインバーターと呼んでいます。直流は一定の電圧で流れるのに対して、交流はプラスとマイナスに交互に行き来しており、プラスからマイナスを経由し、再びプラスに戻るまでを「サイクル」と呼んでいます。1秒間に何サイクル変わるかを周波数と呼び、単位はヘルツ(Hz)で、富士川より西のエリアは60HZ、東は50Hzに分かれています。
太陽光発電で売電するためのパワコンは、単に直流を交流に変換するだけでなく、電力会社の電気の質に合わせて電圧と周波数を合わせる機能も持っています。これを同期機能といいます。電力会社の電気は、複数の風力発電・火力発電・水力発電などで作られてブレンドされていて、それぞれの発電所は同期を取って運転しています。それらと同じようにパワコンも同期を取って動かす必要があります。また同期機能以外にも、電力系統の事故に備え、いろいろな保護機能が内蔵されています。それらはマイコンで制御されているのが特徴です。停電時に安全に停止する機能もその一つの事例です。また電力消費に対して発電が過剰になると電圧が上昇してしまいますが、それを一定の電圧(単相107V、3相222V)に制御する機能も有しています。
パワーコンディショナの効率
パワーコンディショナに入力された直流の電力を交流に変換する割合を「変換効率」と呼びます。普通95%前後の製品が多く、この能力が96や97%のように高い方が良いと思われがちですが、単純にこれだけで効率を比較することはできません。パワコンの効率を左右するのは、太陽光パネルの能力をいかに最大限引き出せるかという能力にあるからです。その機能は「最大電力追従制御機能」と呼ばれています。
最大電力追従制御機能について
太陽電池モジュールの電流と電圧の関係をシミュレーション・グラフで説明してみましょう。電圧が低い状態で使用すると電流が最大値で一定になり、逆に電圧の高い状態で使用すると電流が流れにくくなります。本来、バッテリーに充電することを目的とする太陽光パネルの性質に由来します。太陽光パネルの発電が最大になる点、グラフがカーブしている部分の一点を最大出力動作電圧点と呼び、電流と電圧の積が最大になる点です。パワコンはこの点を探し出してパネルの入力電圧を決めています。つまり、直流の入力電圧はパネルではなくパワコンが決めているということです。
太陽光パネルの電圧は温度によっても変化します。例えば、黒い実線が25℃の場合、点線が47℃の時です。この温度変化にも対応してパワコンは電圧を制御しています。したがって、この直流電圧を制御するマイコンのプログラムによって効率が決まってきます。ただしパワコンの効率は、プログラムの良し悪しによるところが多いので、実際の発電量を比較しなければわかりません。
ブレーカー(分電盤)
いわゆるサーキットブレーカーで、決まった値以上の電流が流れた時に、回路を遮断する役割を持っています。これに対して、漏電遮断器(ELB)は、漏れた電流を検知して回路を遮断するものです。いずれも、異常な事態における機材の破損を防ぐ働きがあります。
積算電力計
電力を売るにも買うにも、電力の量(時間当たりの電力量)によって料金が計算されます。そのため、電力量を計るメーターを積算電力計といいます。どれだけ使ったか、発電したかを積算して表示するものです。アナログ式とデジタル式があり、120Aを超える電流を図る場合は、直接回路内にメーターを入れることができないので、CT(Current Transfer:変流器)と呼ばれる装置を介して、測定します。電力量については、不正ができないように、これらのメーターは電力会社が供給しますが、このメーター代金や取り付け工事費の負担は電力会社によって異なり、また、制度が変更されることもあるので、事前に確認が必要となっています。
まとめ
以上、本記事では、太陽光発電の基本的な知識と、パワコンをはじめとする太陽光発電システムに重要な役割を果たす各種装置の詳細をご紹介させていただきました。価格低下により自家消費の要望も高まり、蓄電池または電気自動車と組み合わせ自家消費を高めるなど多様なビジネスモデルも生まれるようになってきました。
最後に、石油も石炭も天然ガスも、太陽光に育てられた太古の植物が、長い年月の中で生成されたものです。世界のすべてのエネルギーのもとである太陽の光エネルギーを、厚さわずか数ミリのガラスの板に光が当たるというシンプルなパネルで、電気というエネルギーに換える科学がここにあります。今まさに、地球とヒトの未来に向けて、自然と科学の新たな取り組みが始まっています。
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